会長挨拶

日本歯科東洋医学会 会長 山口孝二郎

 2023年4月から、日本歯科東洋医学会会長を拝命いたしました昭和大学医学部 生理学講座 生体制御顎部門 客員教授の山口孝二郎です。伝統ある本学会の会長に着任し、大変身の引き締まる思いです。
 本学会は、1983年に松平邦夫初代会長のもと設立され「東洋医学の英知を人類共有の財産とすべく、我々はその魁にならん」という言葉を胸に地域歯科医療を支えておられる先生方が中心となって運営されてきた学会であり、日本歯科東洋医学会雑誌も40巻発行しており、多数の東洋医学に関する基礎研究や臨床研究の論文を世に送り出してきました。

 近年の超高齢社会、疾病構造の変化の流れの中で、歯科東洋医学のおかれている状況も変化し、オーラルフレイルやポリファーマシーなどの問題も出て参りました。
 大学の歯学教育においても東洋医学が重視されるようになり、2017年には、歯学教育モデル・コア・カリキュラムに和漢薬が明記され、大学教育で漢方薬の知識を教えることとなり、令和4年度のコアカリキュラム改定では、急激な人口構造の変化に応じて、大幅な医療需要の変化に対応できる医療人の養成が社会的に重要とのことから、医学・歯学・薬学教育モデル・コア・カリキュラムの一部共通化が示され、歯科では1)薬物(和漢薬を含む)の作用に関する基本的事項を理解する、2)薬物(和漢薬を含む)の副作用・有害事象の種類及び連用と併用の影響を考慮した薬物治療の基本的事項を理解する、3)患者の服用薬物(和漢薬を含む)の歯科治療への影響と歯科治療時の対応を理解しているといった事項を教育することが求められています。
 また、歯科医師国家試験出題基準 令和5年版にも『和漢薬』に関する出題基準が記載され、2023年の歯科医師国家試験には『和漢薬』という文言が試験問題に出されています。
 更に漢方生薬や鍼灸治療の基礎医学的研究も以前と比べて大幅に進展しており、今まで分かりにくかった漢方薬や鍼灸治療の作用メカニズムも徐々に解明され、英文誌への投稿も増え、世界的に東洋医学の臨床・教育・研究への取り組みが進んでいます。
 本学会が歯科医療における東洋医学のアカデミズム(臨床・教育・研究)をリードし、歯科東洋医学の知識と技術を全世界に普及させるべく活動して参る所存です。

会員各位の今後ますますのご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。