歯科医師の鍼灸治療
1.歯科医師は、鍼灸治療を行ってよいでしょうか?
本学会初代会長松平邦夫先生、2代目会長福岡明先生、5代目会長高橋一祐先生の共著「臨床歯科ハリ麻酔入門」(書林1977年)第16章に法律的適用が記載されています。
はり灸についての規定は、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(以下、あはき等法)にあります。あはき等法は、昭和21年に成立し、昭和22年には医師法、昭和23年には歯科医師法が制定されています。あはき等法第1条を見ると、冒頭に「医師以外の者で」とある他は、はり灸を業とする場合、はり師免許、きゅう師免許を必要とすると書いてあります。ここには歯科医師に関する記載は一切ありません。つまり、あはき等法第1条の規定からは、歯科医師がはり灸を行う場合についても例外無くはり師免許、きゅう師免許が必要であるということになります。
しかし、歯科医師が鍼灸治療を行うことは、あくまでも歯科治療の手段として行うものであります。よって通常の歯科治療行為と同様であると解釈でき(はりや灸を道具として歯科治療を行っていると考えた場合)、あはき等法や歯科医師法に抵触することはありません。但し、歯科医師は歯科医業の範囲内ではり灸を使用しなければなりません。
2.FDI(国際歯科連盟)からの勧告
2002年10月
FDI(国際歯科連盟)より次のような声明文が出されています。
勧告「歯科医業における鍼療法の利用」
1.歯科医師は適切な講座を受講し、必要な技術を習得した後でのみ、患者に鍼療法を試みるべきである
2.鍼療法は患者の状態を詳細に診断し、一般に認められた従来の治療法を用いた後でのみ使用すべきである(例えば、感染症は適切な診断を行ない、感染症としての治療を行なわなければならない)。
3.厳格な相互感染管理法が実施されていなければならない。一回使用の鍼を使用しなければならない。
4.患者に治療を行なう場合、すべての指示、処置、結果を詳細に記録しておかなければならない。
5.歯科医業における鍼療法の利用に関する研究が奨励される。
これを充分に効果的なものとするためには、複数の研究機関による研究を必要とすることになるであろう。また、これは適切な全国的規模の学会や学術機関と連携して行なうことが望ましいであろう。
6.鍼療法に関する教育と経験は、学部歯科教育、大学院歯科教育、歯科生涯教育の一環としてみなされるべきである。
日本歯科東洋医学会にて、是非学んでください。