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第39回日本歯科東洋医学会学術大会
(第24回日本歯科学術大会 併催)
会期: 2021年9月23日(木・祝),24日(金),25 日(土)
会場:パシフィコ横浜
(一部 Web によるハイブリッド開催)

2021 年度(令和 3 年) 第 39 回日本歯科東洋医学会学術大会について

第39回日本歯科東洋医学会学術大会は,第24回日本歯科医学会学術大会との併催となります。

大会概要

第39回日本歯科東洋医学会学術大会(第24回日本歯科学術大会 併催)
会期: 2021年9月23日(木・祝),24日(金),25 日(土)
会場:オンライン開催

参加登録

参加登録期間:2021年4月1日(木)~10月31日(日)17:00
参加費:本学会会員は無料
参加登録方法:第24回日本歯科医学会学術大会ホームページよりオンライン登録
https://site2.convention.co.jp/24jads/registration/

会員発表

本会会員の発表は抄録集の以下のページでご確認ください

P55
講演4
山口孝二郎先生(座長 河野渡先生)

P125
テーブルクリニック
e-TC014久保茂正先生
e-TC015英保武志先生

P188~P191
e-ポスターセッション
P305-M~P327-M

P117
ランチョンセミナー5
e-LS005e
永山正人先生

P186,187
e-ポスターセッション
P303-L,P304-L関根陽平先生

講 演 抄 録

講演4
温故知新 オーラルフレイルに対応する歯科東洋医学
昭和大学医学部生理学講座生体制御学部門
医療法人ハヤの会田中矯正歯科歯科慢性疾患診療室
山口孝二郎

 現在,日本は人生100年時代を迎えて,茶寿(108歳)を目指せる時代へと変化してきた.また2018年の人口動態統計月報年計(概数)では,死因の第3位に「老衰」が入ってきた.しかし平均寿命と健康寿命の差は男性9.1年,女性12.7年あり,その根底にフレイルが存在する.また,2040年問題を含めて,フレイルをいかにコントロールしていくかは重要で喫緊の課題と考えられている.

 2018年に出された柏スタディでは,身体的フレイル・サルコペニアの発生に関してオーラルフレイルが関連していることが判明してきた.

 柏スタディでは,オーラルフレイル該当者は身体的フレイルの発生率が2.41倍,サルコペニアは2.13倍,介護度3以上の要介護認定2.35倍,全死亡率は2.09倍と報告されている.

 現在,オーラルフレイル対策として,咬合力低下,咀嚼機能低下,舌口唇運動機能低下,低舌圧,嚥下機能低下については筋力トレーニング,口腔乾燥については唾液腺マッサージ,口腔不潔に対しては舌・口腔の清掃が勧められている.
 他方,東洋医学では「虚証(腎虚を含む)」の概念がフレイルに共通するといわれている.また,フレイルの前段階としてのオーラルフレイルは東洋医学の「未病」として捉えられる.

 医科ではフレイルサイクルのコントロール・治療に,早くから人参養栄湯,補中益気湯などの補剤を中心に漢方療法が取り入れられているが,歯科ではまだその普及は低いままである.

 今回の講演では,貝原益軒の『養生訓』,香月牛山の『老人必用養草』など古典を参考にして,オーラルフレイルを東洋医学的に考察し,舌診の解説ならびに「薬価基準による歯科関係薬剤点数表」に掲載されている漢方11方剤のなかからオーラルフレイルに効果があると考えられる漢方を用いた症例報告などを行い,心身の機能低下まで繋がるフレイルの未病として,オーラルフレイルを東洋医学的にコントロールして健康寿命を延ばす方策を考えたいと思う.

テーブルクリニック14

歯科における漢方薬治療(基礎と臨床)
くぼ歯科
久保 茂正

 超高齢社会の現在,身体に優しい,究極の予防医学となる漢方薬を飲んでいる患者が毎日来院している.漢方薬について理解できているだろうか? 歯科で漢方薬を処方できるがご存じであろうか? 2012年日本歯科医師会発行の「薬価基準による歯科関係薬剤点数表」に,漢方薬7方剤(歯周炎に排膿散及湯,口内炎に半夏瀉心湯,黄連湯,茵蔯蒿湯,口渇に白虎加人参湯,五苓散,歯痛に立効散)が,2018年4方剤(病後の体力増強に補中益気湯,病後の体力低下に十全大補湯,痙攣を伴う疼痛,筋肉関節痛に芍薬甘草湯,上半身の神経痛に葛根湯)が追加され,合計11方剤が掲載された.漢方薬に関する基礎知識と11方剤処方の勘所について説明する.

テーブルクリニック15

歯科領域へ鍼灸をどの様に利用できるか
ABO歯科クリニック
英保 武志

 東洋医学の1つに鍼灸があります.歯科領域に鍼灸の利用を考えたとき,患者様に対する利用,歯科医師や歯科衛生士,スタッフ等の健康管理に対する利用があります.今回は,経絡やツボとは何か? ツボにどのような鍼を使いどのような手技で打つのか,鍼を挿入せずにツボ刺激できる方法,歯科領域(側頭筋や咬筋を緩める・嘔吐反射緩和のツボ・開口障害など),スタッフの健康管理(頭痛・生理痛・肩こり・風邪・腰痛など)のために,ぜひ覚えておきたいツボの場所と探し方を,わかりやすくお伝えいたします.鍼灸の知識を身につければ,その日から自分自身の健康管理にも利用できることが魅力的なところです.多くの方に東洋医学の良いところを伝えたいと考えています.

一般演題(e—ポスター)

① サウンドヒーリングを経絡治療に用いた歯科臨床
○河野  渡
河野歯科医院

 歯科治療を受ける患者の多くは,治療に恐怖感を抱いている.長年,このような患者にできるだけリラックスして歯科治療を受けてもらえるように,さまざまな東洋医学的療法を行ってきた.今回,そのなかで,骨伝導を利用して音を直接経穴(ツボ)に伝え心身をリラクセーションに導く「サウンドヒーリングシステム」を利用しての歯科臨床について紹介する.この方法を日常歯科臨床に応用し,患者には大変喜ばれている.

② 植物発酵物(Fermented Botanical Product)の歯周病に対する効果の検討
○岩崎 嘉代1,6),永山 正人2,6),市川  徹3,6),秦  光潤4,6),齋藤 道雄5,6)

1)岩崎歯科医院,2)永山ファミリー歯科クリニック,3)市川歯科医院,
4)ハタデンタルクリニック,5)齋藤ファミリーデンタル,6)日本口腔サプリメント研究会
 腸管内には多くの免疫細胞が存在し,腸での免疫作用のみならず,全身の病原菌抵抗性へ寄与している.発酵食品は腸内細菌叢の改善を介した免疫賦活作用が報告されている.今回,植物発酵物(Fermented Botanical Product;FBP,万田発酵株式会社製)の歯周病改善効果を検証した.FBPを朝晩2回(2.5 g/回),12~24週間投与したところ,歯周病改善傾向が認められたので報告する.

③ ビスホスホネート製剤やデノスマブにより顎骨壊死を生じた症例にサプリメントを応用した2症例
○齋藤 道雄1,8),永山 正人2,8),市川  徹3,8),秦  光潤4,8)
岩崎 嘉代5,8),木村 明美6,8),雨宮  淳7,8)
1)齋藤ファミリーデンタル,2)永山ファミリー歯科クリニック,3)市川歯科医院,
4)ハタデンタルクリニック,5)岩崎歯科医院,6)木村歯科医院,
7)雨宮デンタルクリニック,8)日本口腔サプリメント研究会

 骨修飾薬の長期投与で顎骨壊死を生じ骨露出した患者に対して腐骨除去手術を施行し,術後ハイドロ・フォルテとオメガ3グルカン(イムダイン株式会社)を摂取することにより,術後の経過が良くなった症例に対し,その効果について考察したので報告する.

④ 女子サッカー選手の矯正治療と鍼灸治療の歯科統合診療症例報告
○関根 陽平,関根 春香
みはる矯正・歯科医院

 現代西洋医学を中心にして,補完・代替医療で補っていく医療を統合医療という.統合医療は疾患の治療を図るだけではなく,予防や未病治,健康増進や維持をも目的としている.そのなかで,現代西洋医学である歯科医療の一分野である矯正歯科治療における統合医療の実践の報告は,多くはない.今回は矯正歯科治療,一般歯科治療,鍼灸治療で,開咬・叢生症例を改善し,スポーツのパフォーマンスをも改善できた症例を報告する.

⑤ 顎関節症例・アングルⅢ級症例を矯正治療を中心とした歯科統合医療により治癒へ導いた一症例
○小林 洋子1),関根 陽平2),関根 春香2)
1)飯田橋内科歯科クリニック,2)みはる矯正・歯科医院

 現代西洋医学を中心にして,補完・代替医療で補っていく医療を統合医療という.統合医療は疾患の治療を図るだけではなく,予防や未病治,健康増進や維持をも目的としている.現代西洋医学である歯科医療における統合医療の実践の報告は多くはない.今回は一般歯科治療,矯正歯科治療,ならびに鍼灸治療についてそれぞれの専門医が連携を図ることで,開咬症例を改善し,多く抱えていた不定愁訴をも改善できた症例を報告する.

⑥ 歯科臨床に役立つ,ツボ刺激療法の応用
○小山 悠子1),福岡 博史2),福岡  明2),砂川 正隆3)
1)医療法人社団明悠会サンデンタルクリニック,2)医療法人社団明徳会福岡歯科,
3)昭和大学医学部生理学講座生体制御学部門

 一般的に歯科治療というものは敬遠されがちであるが,痛くない,腫れない,怖くない,気持ちがよい,快適な診療を実行できれば,患者も喜んで通院できるようになり,リラックスした患者の診療はしやすく,術者側にも大きなメリットがある.ツボ刺激療法は,外科処置後の不快症状防止に,開口障害,鎮痛,口蓋咽頭反射,歯科恐怖症,咬合採得の対応など,日常臨床で多岐にわたり応用できることを紹介する.

⑦ 頭蓋骨マッサージで顎関節症が改善した一症例
○岡 佐和子,小坂 峰雄
小坂歯科医院

 患者は10代男性.右側顎関節の痛みを主訴として来院.開口時に下顎の右側変位があった.顎関節症の病態分類では顎関節痛障害(Ⅱ型).呼吸法を指導するとともに,頭蓋骨マッサージを行った.その結果,下顎の開口時右側変位,顎関節部の疼痛など顎関節症の症状が軽減した.頭蓋部の骨縫合は日常の態癖や頭や顔の筋肉などの重みにより歪みを起こすことが考えられ,このようなケースには頭蓋骨マッサージは有用であると考えられる.

⑧ 鍼治療が適応となる歯科疾患
○中村 泰規
中村歯科医院・茶壽鍼灸院

 鍼治療が適応となる歯科疾患として,① 歯痛,② 抜歯後・術後疼痛,③ 顎関節症,④ 口腔乾燥症,⑤ 歯科恐怖症,⑥ 嘔吐反射,⑦ 三叉神経痛,⑧ 顔面神経麻痺,⑨ 摂食・嚥下機能の改善,などが考えられる.西洋医学での治療法は周知されていると思うが,東洋医学的アプローチとなると未知の方が多いと思われる.そこで実際にどのような手技で行うかを提示する.

⑨ 歯科麻酔薬においてアレルギー既往のある患者に鍼麻酔を応用し抜歯した1症例
○市村  葉,横瀬 敏志
明海大学歯学部機能保存回復学講座保存治療学分野

 【緒言】歯科麻酔薬アレルギーの既往のある患者に,鍼麻酔にて抜歯を行い良好な経過をみたので報告する.
 【症例】83歳,女性.2カ月前より左下奥歯の動揺,腫脹を繰り返し,2週間前より痛みを伴った.診査の結果,歯根破折と診断し,鍼麻酔下にて抜歯を行うこととした.
 【処置および経過】左右合谷,左側の地倉,大迎,下関,承漿に置鍼し,抜歯および縫合を行い,経過良好.
 【結論】選択したツボは,麻酔効果が得られることが示唆された.

⑩ 精神的ストレスならびに急性炎症性疼痛に対する鍼治療の有用性の検討
~円皮鍼を用いた基礎研究より~

○砂川 正隆1),山口孝二郎1),渥美 研太1),服部  敏1),小山 悠子2)

1)昭和大学医学部生理学講座生体制御学部門,
2)医療法人社団明悠会サンデンタルクリニック
 歯科診療には,精神的ストレスや痛みはつきものである.ラット精神的ストレスモデルならびに急性痛モデルを用い,鍼治療の有効性を検討した.用いた円皮鍼はシール状の短い鍼で,初心者でも安全で簡便に使用できる.ストレスモデルとして孤立飼育による社会的孤立ストレスモデル,疼痛モデルとして上口唇の急性炎症性疼痛モデルを作製した.いずれのモデル動物に対しても効果が認められた.歯科診療にも円皮鍼は応用可能である.

⑪ 血圧の変化を指標としたSRP時の合谷穴に対する置き鍼の効果
○細川 史郎1),細川 真暉2)
1)細川歯科医院,2)岡山大学歯学部

 合谷穴(LI4)に対する鍼治療は,口腔領域の鎮痛効果を有することが報告されている.近年,日常の治療において全身状態の把握管理のため,モニタリングを行う機会が増えている.血圧の変化をモニタリングしながら,合谷穴に置き鍼を貼付し,歯周基本治療のスケーリング・ルートプレーニングを行った.また,Visual analogue scale(VAS)を用い,術中の痛みの程度を確認した症例を報告する.

⑫ シェーグレン症候群に対して東洋医学的治療を行った長期症例報告
○椋梨 兼彰
むくなし歯科医院

 今回,シェーグレン症候群に対して東洋医学的アプローチ(鍼灸・漢方薬)を用いて改善傾向がみられた長期症例報告を行う.症例:66歳女性.平成15年口腔乾燥を主訴に来院.大学歯学部附属病院においてシェーグレン症候群と診断され,当医院で漢方薬・鍼灸治療を開始.鍼灸治療では主に廉泉穴を用いて鍼灸鍼・円皮針を用い,並行して漢方薬内服処方を行い定期的に問診,唾液の採取(ワックス法)を行い経過を観察した.

⑬ 肩こりを伴う開口障害に対する円皮鍼及びツボ指圧療法と軽い運動で改善がみられた1症例
○中原 順子,中原 雅之
住吉駅前歯科医院

 【症例】18歳,男性.2カ月前に肩こり,1カ月前より開口障害.最大開口量約26 mm,関節音無,下顎頭は前方滑走するが両側咀嚼筋痛有.
 【診断】筋性開口障害.
 【処置及び経過】パイオネックスを肩井に貼付,曲池を1回60秒10回指圧と腕振り運動を指導.4日後に開口量約30 mmで筋痛軽減.以降パイオネックスZEROはみずから貼り,4週目で開口量約40 mm,肩こりと筋痛も改善.
 【考察】この処置で筋肉緊張緩和し改善.

⑭ ブラキシズムに対する漢方薬の効果
○中原 雅之,中原 順子
住吉駅前歯科医院

 【緒言】ブラキシズムが原因と思われる咬合痛・咀嚼筋痛症例に,漢方薬でストレス緩和をした治療報告.
 【方法】咬合痛・咀嚼筋痛のある男性3名・女性1名に抑肝散,抑肝散加陳皮半夏,半夏厚朴湯を各1週間ずつ就寝前に1包服用させ自宅で咬筋部に筋電計を装着.どの薬が有効か検討.
 【結果】男性2名は抑肝散,他男性1名・女性1名は抑肝散加陳皮半夏が有効であった.
 【考察】ストレスを抑制する抑肝散こそ診療に必要な漢方薬であり,保険適用を望む.

⑮ TAO問診票を用いた漢方薬の選択方法
○小坂 峰雄
小坂歯科医院

 歯科保険適用漢方薬が11方剤となり,漢方薬を使用する機会が増えると思われる.開業医が漢方薬を使用するにあたり普及しない一番の問題点は,漢方薬選択に時間がかかりすぎることである.漢方薬を臨床応用するのにTAO問診票を使い,初心者の先生でも容易に体質に合う漢方薬を選択し,効率よくまた簡単に歯科臨床へ漢方薬を応用できる方法を紹介する.

⑯ 舌診の基礎
東 竜太朗
東歯科医院,TAO東洋医学研究会

 東洋医学の診査診断に四診がある.問診・望診・切診・聞診である.また,漢方薬の診査診断の際に,舌診は欠くことのできない診査である.今回は,この舌診の基礎を解説していきたいと思う.昨今,歯科漢方薬の保険適応が11方剤となった.この11方剤を歯科臨床に有意義に活用すべきである.

⑰ 当院における漢方処方の実態と効果についての調査
○岡田  崇
みどりの丘歯科医院

 歯科開業医の現場においても,西洋医学的アプローチだけでは対応が難しいケースがある.当院では漢方薬によるアプローチも行っている.そこで,当院で処方した漢方薬の種類,処方対象とした疾患,また効果について客観的に把握することを目的として調査を行った.対象患者は52例,そのうち最も多く処方していたのは排膿散及湯(13例)であった.処方後,著効3例,効果あり39例であった.さらなる歯科適用漢方薬の拡大が期待される.

⑱ 漢方エキス製剤~立効散の構成と作用~
○山本 卓生1),加藤 清志2),市川  徹3)
1)歯科オムニデンティックスJRタワー,2)大町歯科加藤医院,3)市川歯科医院

 2018年の改定により,歯科保険適応となる歯科関係薬剤点数表に11の漢方エキス製剤が収載された.そのなかにあって,歯痛の適応として収載されている立効散(りっこうさん)について考察する.立効散は細辛,升麻,防風,甘草,竜胆の5つの生薬から構成され,他の漢方製剤とは少し異なり,証を選ばずあまり病態を考慮せず鎮痛剤として用いることができるため,処方しやすい有用な漢方薬の一つであると考えられる.

⑲ 繰り返す舌の摂食痛を認めた患者に対し立効散の含嗽が奏功した一例
○佐藤 英和
ひでかず歯科口腔外科クリニック

 70代,女性.当院初診6日前より舌に摂食時痛を認め,X年11月に当院初診.舌候は淡紅,少苔,裂紋,舌乳頭萎縮を認めた.舌炎の診断の下,アズレンスルホン酸ナトリウム水和物のうがい液を開始し一時症状は軽減したが,再燃.口腔内の疼痛に対し立効散エキス顆粒を処方し食前の含嗽を指導したところ,自覚症状および食事摂取への不安の軽減を認めた.立効散の口腔粘膜の疼痛に対する効果が示唆された.

⑳ アフタ性口内炎への補剤によるアプローチ
○藤田 康平1,3),小澤 夏生2,3)
1)医療法人さくら会さくらのクリニック歯科口腔外科,2)小澤歯科醫院,
3)慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科教室

 近年注目されるフレイル(Frailty)は,漢方医学で虚証の概念に相当する.今回われわれは,アフタ性口内炎を十全大補湯と半夏瀉心湯を用いて軽快した症例を経験したので報告する.アフタ性口内炎は東洋医学では熱証であるが臨床においては実熱・虚熱または夾雑したものと多彩であり,東洋医学的診断が有用であった.補剤の十全大補湯を使用することは本症のように難治性の口内炎の治療選択肢の一つとなると考える.

㉑ 排膿散及湯を使用した上顎洞炎治療
○杉山 貴敏
岐阜・西濃医療センター西美濃厚生病院歯科口腔外科

 排膿散及湯は皮膚や歯肉などの化膿性炎症に用いられる,日本歯科医師会点数表記載がある桔梗湯ベースの漢方製剤である.当科では上顎洞炎治療に対し良好な治療結果を得ており,症例提示し報告する.漢方医学的には急性上顎洞炎に葛根湯加川芎辛夷,辛夷清肺湯などが,膿汁が貯留している疾患には十味敗毒湯,柴胡清肝湯,排膿散及湯がよいとされているが,炎症の病態時期,患者の実虚の証を問わず使用可能な有用な方剤であると考える.

㉒ シェーグレン症候群による口腔異常感症に滋陰降火湯が奏功した一症例
○池田 聡子1),藤田 康平2,4),小澤 夏生3,4)
1)医療法人敬愛会石黒歯科・矯正歯科医院,2)医療法人さくら会さくらのクリニック歯科口腔外科,
3)小澤歯科醫院,4)慶應義塾大学医学部歯科・口腔外科教室

 シェーグレン症候群は,涙腺・唾液腺などの外分泌腺に対する臓器特異的な慢性炎症による目や口腔の乾燥症状をはじめとした全身性の自己免疫性疾患であり,歯科治療では大変苦慮することが多い.口腔乾燥や舌の違和感に対して,滋陰降火湯により症状が改善された症例を報告する.漢方医学的には口腔乾燥症は三因方にわたるため,術者も広い視野をもつことが要求される.漢方治療により残存機能を高め,QOLの改善につながったと考える.

㉓ めまいを伴う舌痛症に対して五苓散が奏功した一症例
○表川 実哉
おもかわ歯科医院

 40歳女性,舌縁部の痛みがあり来院.しばしばめまいもある.舌は,やや胖大舌であり白膩苔が認められた.脈は渋.問診では,天候が悪化すると症状が強くなる,尿量減少,口渇,下肢のむくみがあった.よって水毒の病態であると考え,五苓散エキス顆粒7.5 gを処方した.2週後には舌の痛みは軽減したが,軽度のめまいと耳鳴りがあった.さらに同処方継続し,2週後には舌の痛みも軽減し,めまいも改善された.